建築と土木は、転職市場では別の業界です。分かれ目は発注者の一行

建築と土木は、転職市場では別の業界です。分かれ目は発注者の一行 建設業界の地図

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求人サイトで「施工管理」と検索すると、建築の求人と土木の求人が同じ一覧に並びます。業界の外から見れば、どちらも工事現場を管理する仕事に見えます。ところが採用の場では、この二つはほとんど別の業界として扱われます。この記事は、建設業界への転職や進路を調べ始めた人が、「建設業界」という一つの箱で考えたまま応募して、理由の分からないまま書類で止まるのを避けるための話です。

業界の外から持たれやすい思い込みの一つに、「大きなゼネコンは建物も道路もダムも同じようにやっている」というものがあります。ゼネコンとは、工事全体を発注者から直接請け負って、専門の工事会社をまとめる元請の会社のことです。たしかに大手は両方やっています。ただ、社内では建築と土木で別の組織が動いていて、規模も採用の基準も同じではありません。ここを知らずに応募先を選ぶと、選考の入口でつまずきます。

分かれ目は「誰から仕事をもらっているか」です

建築と土木の一番の違いは、工事の中身より先に、お金を出す相手にあります。

土木の発注者は、国土交通省、都道府県、市区町村、高速道路会社、鉄道会社といった公共側が中心です。道路、橋、河川、上下水道、トンネル。どれも税金や公共料金から予算が出ます。一方、建築は民間の施主、つまりビルを建てたい会社や、工場を建てたいメーカーが発注者になることが多くなります。

なぜ建築は民間に寄るのか。公共のお金は、まず水道や道路といった生活に直結するインフラに向かうからです。税の使い道に厳しい目が向く状況ではなおさら、新しい庁舎やホールといった建築には予算が回りにくくなります。結果として、土木は公共側、建築は民間側という重心の違いが生まれます。

この違いは、入社後の一年の過ごし方にまで出ます。面談で建築から土木の会社に移った方から後日談を聞くと、最初に驚くのは書類の量と、繁忙の波の形だという話が何度も出ました。公共工事は年度で区切られるため、三月完成の現場が重なります。年明けから年度末にかけて一斉に山が来る。建築は施主の都合で竣工時期が散るので、波の来方が違います。

面接で確かめるなら、こう聞けます。「直近三年で完成した現場は、何月完成のものが多いですか」。三月に固まっていれば公共中心、ばらけていれば民間の比率が高い。休みの取りやすさを「残業時間は何時間ですか」と聞くより、この聞き方のほうが土木の会社では中身が出ます。

社名では分かりません。土木が強い会社と建築が強い会社は一致しない

知名度のある会社なら土木も建築も同じ規模でやっている、とは限りません。

竹中工務店は土木を竹中土木という別の会社に分けています。清水建設のように両方を持つ会社でも、売上に占める土木の比率は二割ほどにとどまります。比率は年度で動くので細かい数字を覚える必要はありませんが、「社名の大きさ」と「土木の大きさ」は別物だという感覚は持っておいたほうがいいです。地場の建設会社でも、道路の維持工事を主力にしてきた会社と、店舗や工場の建築を主力にしてきた会社では、中身がまったく違います。

ここで起きるのが、求人票の職種欄だけを見た応募です。「施工管理職/総合職採用」とだけ書かれている求人に、土木をやりたい人が応募する。会社としては建築の人員が足りていて、土木部門は数人規模。面接では「配属は適性を見て決めます」と言われ、入社後に建築側に回る。会社は嘘をついていません。募集の枠が総合職なので、そう書いてあるだけです。

応募前に自分で確かめられます。会社のサイトの施工実績のページを開いて、直近の案件を五件、発注者名だけ拾ってください。「◯◯県」「◯◯市」「◯◯鉄道」が並べば土木側に足場のある会社、事業会社の社名が並べば建築側です。実績ページが工事名だけで発注者を出していない会社もあります。その場合は、面接で「御社の土木部門の主な発注者はどちらですか」と聞けば済みます。この質問に即答できない採用担当なら、その部門は社内でも主力ではないと考えていい。

転勤も給与も「土木だから」では決まりません

土木は全国転勤、というのも一括りすぎる理解です。

たしかに海洋土木、つまり港や海底の工事を手掛ける会社では海外赴任がある一方で、地域の道路や河川を中心に回していて、国内の、それも一定のエリアから出ない会社も多くあります。決めているのは「土木かどうか」ではなく、その会社がどこの発注者と付き合ってきたかです。自治体の仕事を積み重ねてきた会社は、その自治体の外に出る理由がありません。

給与も同じで、大手であれば土木と建築で差はほとんどありません。ただし業界全体の実勢を見ると、土木のほうが低い水準になります。ここに地域差が重なるので、都心部の建築の求人票で見た額をそのまま地方の土木に当てはめると、必ずずれます。求人票の金額を見るときは、どの地域の、どの層の会社の話なのかを必ず一緒に見てください。

いま給与に不満があって動くことを考えている場合、建築と土木では会社を変えて解決するかどうかの答えまで分かれます。その切り分けは「給料が安いから辞めたい」。建築と土木で、転職で解決するかの答えが違いますに書いています。

資格の効き方も違います。土木の元請では一級土木施工管理技士が事実上の必須になります。理由は、本人の実力の証明である以上に、会社が公共工事を取るための要件として資格者の数が効くからです。だから資格を取ると処遇に返ってきやすく、百万円ほど変わる例があります。建築の資格も評価されますが、会社の受注枠に直接効くという性質は土木のほうが強い。この仕組みの詳しい話は土木の元請に書類が通らないのは、経験ではなく経審の点数のせいかもしれませんに譲りますが、「土木では資格が会社の売上に紐づいている」とだけ覚えておけば、面接で資格の話が早い段階で出てくる理由が分かります。

転勤を確かめるなら、人事ではなく二次面接の工事部長に聞くのが確実です。「直近三年で完成した現場は、どのあたりでしたか」。地図の上で答えが返ってくれば実態のある範囲です。「基本的に転勤はありません」という一言で終わる返答より、地名が三つ四つ出てくる返答のほうが情報量があります。

転勤の確かめ方そのものは、転勤なしの求人で単身赴任になる理由。工事部長に聞く四つの質問に書いています。

二十代なら行き来できます。それでも同じ側の求人が並ぶ理由

建築から土木へ、土木から建築へ。二十代であれば移れます。育成前提で採れる年代だからです。ただ、積極的に勧められるものではありません。

三十代以降になると話が変わります。企業は即戦力として見るので、「施工管理の経験十年、ただし建築」という経歴は、土木の会社では経験の一部しか評価されません。書類選考で落ちる理由がこれです。経験が足りないのではなく、評価される軸が別なのです。

企業側の計算も書いておきます。人手不足なのだから未経験でも歓迎されるはず、と思う人は多いのですが、会社の中では矛盾していません。一人採ると、紹介手数料が先に出て、独り立ちするまでは給与を払いながら利益が出ない期間が続き、教える側の時間も現場から引かれます。そのうえ、力がついた頃に辞める可能性も確率として織り込まれます。この合計から回収年数を逆算するので、未経験に高い額は出せない。人を欲しがっていることと、高く出せないことは、同じ帳簿の上で両立します。

そしてエージェント側の話です。「土木も見てみたい」と面談で伝えたのに、戻ってきたのが今までと同じ側の求人ばかりだった、ということが起きます。担当者の怠慢ではなく、計算の結果であることが多い。紹介の報酬は決まった人の年収に紐づく成功報酬です。評価が下がる方向の転職は、提示年収が落ちるため候補者本人が最後に断りやすく、企業側も踏み切りにくい。決まりにくくて金額も下がる求人より、決まる求人を先に出す。これは仕組みとしてそうなっています。

もう一つ、知っておくと損がないことがあります。求人票の職種欄で「施工管理」と書かれていれば、建築と土木の区別をつけずに送ってくることも起こります。悪意ではなく、区別の存在を知らないだけです。だから先ほどの質問を、担当者にもそのまま投げてください。「この会社の土木の発注者はどこが多いですか」。確認して返ってくるか、返ってくるまでにどれくらいかかるかで、その担当者がどこまで中身を見ているかが分かります。

まず、気になる会社の施工実績から発注者名を五件書き出す

今日できることを一つだけ挙げます。

気になっている会社のサイトを開いて、施工実績のページから直近の案件を五件選び、発注者名だけをメモに書き出してください。工事名は要りません。自治体名や鉄道会社名が並ぶのか、民間企業の社名が並ぶのか。それだけで、その会社が土木側と建築側のどちらに足場を置いているかが見えます。

二社か三社分やると、同じ「建設会社」という看板の下に、まったく違う二つの商売が入っていることが分かるはずです。その感覚ができてから求人票に戻ると、読める情報の量が変わります。どちらを選ぶかは、そのあとで決めれば間に合います。

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