提示年収が同じなのに手取りが違う。賞与の中身をどこまで聞くか

提示年収が同じなのに手取りが違う。賞与の中身をどこまで聞くか 年収と待遇

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提示された年収が同じ二社で迷っているなら、比べるべきは金額ではなく賞与の形です。年俸制で賞与そのものが無い会社と、基本給の七か月分が賞与で出る会社では、同じ「年収600万円」でも一年の中でお金の入り方がまったく違います。この記事では、賞与の一点だけを掘ります。年収欄全体の読み方は求人票の年収の読み方 幅・みなし残業・賞与のどこまでが確定分かで書いたので、ここでは繰り返しません。

同じ600万円でも、年俸制と賞与七か月では別の給与です

面談でよくあった場面です。内定が二社から出て、どちらも提示は600万円。応募者は「じゃあ条件は同じですね」と言う。そこで内定通知書を両方出してもらうと、中身がまるで違うことがあります。

一社は年俸制。600万円を12で割って、毎月50万円。賞与という項目が存在しない会社です。設計事務所や外資系の系列、あるいはプラント系の一部にこの形があります。

もう一社は基本給ベース。月30万円に、賞与が年間七か月分。単純計算で月30万円×12か月=360万円に、賞与210万円が乗って570万円。残りは諸手当で埋める、という組み立てです。

毎月の手取りだけを見ると、年俸制のほうが圧倒的に多く見えます。実際、入社直後の数か月は年俸制の会社のほうが生活は楽です。ところが賞与型の会社は、夏と冬で大きなまとまりが入る。住宅ローンの審査では、年俸制のほうが安定収入として見られやすい一方、ボーナス払いを組みたい人には賞与型が向く。どちらが良いという話ではなく、自分の生活のどこに金が要るかで正解が変わるという話です。

ここを聞かずに決めた人が、入社して最初の夏に「賞与が無い会社だと知らなかった」と連絡してきたことが何度かあります。求人票には「年俸制」と一行書いてあった。読んではいたけれど、それが「夏と冬に何も入らない」という意味だと結びついていなかった、ということです。

「賞与年二回」の一行は、月数を何も約束していません

求人票の賞与欄で一番多い書き方が「賞与:年2回(7月・12月)」です。この一行から読み取れるのは、支給のタイミングが二回あることだけ。月数も、過去の実績も、そもそも毎年出ているのかも、何も書かれていません。

建設・設備の業界で言えば、賞与の幅は本当に広いです。年俸制で賞与ゼロの会社から、基本給の七か月分が出る会社まであります。しかも七か月出す会社が求人票に「賞与年2回」としか書いていないことは珍しくありません。人事としては、良い年の数字を書いて翌年下がったときに揉めるのを避けたい、という判断です。つまり書いていないことは、悪い会社の証拠ではない。ただ、書いていないなら聞くしかない。

聞き方は、抽象的に「賞与はどのくらいですか」と投げても、たいてい「業績によります」で終わります。効くのは月数と実績年数を分けて聞く形です。

  • 「基本給の何か月分という形で決まりますか。それとも別の計算ですか」
  • 「直近三年で、月数に上下はありましたか」
  • 「業績連動の部分と、固定で出る部分は分かれていますか」

三つ目が特に効きます。会社によっては「夏冬は基本給二か月ずつが固定で、そこに業績分が乗る」という組み方をしています。この固定分が分かれば、最低ラインが見えます。逆に「全部業績連動です」と返ってきたら、悪い年はゼロもあり得る設計だと理解しておくべきです。

決算賞与は、どの現場に付いていたかで額が変わります

ここから先が、求人票にも会社説明にもまず出てこない部分です。

建設業では決算賞与を出す会社がかなりあります。会社の利益が出た年に、決算後にまとめて配る仕組みです。応募者からすると「三回目のボーナス」に見えるので、面接で「決算賞与もあります」と言われると心証が良い。実際そこで志望度が上がる人を何人も見てきました。

ただ、決算賞与の原資は会社の利益です。そして建設会社の利益は、現場単位の収支の積み上げでできています。結果として何が起きるか。利益の出た現場に付いていた人と、赤字現場の立て直しに投入された人とで、額が変わるということです。

後日談で聞いた話です。同じ年次の二人が同じ会社で、片方は順調に進んだ新築の現場で二次担当、もう片方は難しい改修現場に応援で入って走り回っていた。決算賞与の額は前者のほうが上だった、と。本人の働きが軽かったわけではないのに、です。

もちろん会社によって配分の考え方は違いますし、全社一律で配るところもあります。ただ「現場の収支が効く配り方をしている会社かどうか」は、入る前に聞けます。

「決算賞与の配分は、全社一律ですか。それとも部門や現場の収支が反映されますか」

これを二次面接で工事部長や役員クラスに聞くと、かなり具体的な答えが返ってきます。人事は制度の建前で答えますが、現場を持っている人は実際の配り方を知っているからです。「まあ、いい現場に当たった年は違いますよ」といった答えが返ってきたら、それが実態です。

そして決算賞与は、毎年出る前提で年収を計算してはいけないものです。年収シミュレーションに決算賞与を足して「700万円になります」と言われたら、それは良い年の数字だと理解してください。

エージェントが賞与の内訳を細かく出したがらない理由

不都合な話を書きます。

人材紹介の手数料は、決まった年収に対する割合で計算されます。成功報酬なので、決まらなければゼロ。担当者は月ごとの数字を持っています。この構造からすると、提示年収が高く見える求人を勧めるほうが、担当者にとっては都合が良い。

そして「年収600万円(賞与含む)」と書かれた求人と、「年俸600万円」の求人は、紹介する側にとっては同じ600万円の案件です。賞与の月数や決算賞与の偏りまで踏み込んで説明すると、応募者の温度が下がることがある。だから積極的には触れない、という力学は確かに働きます。

ただ、これを「担当者が隠している」と受け取るのは少し違います。実際のところ、賞与の月数や決算賞与の配分ルールは、企業が求人票に書いていないことが多く、担当者も正確に把握していないケースがかなりあります。企業の人事担当と話しても「業績によりますので」で止まることがある。知らないから言えない、という場合のほうが多いです。

だから使い方としてはこうなります。担当者に「知らないなら企業に確認してください」と頼む。これは正当な依頼です。エージェント経由で応募する利点の一つは、応募者が直接聞きにくいことを代わりに聞いてもらえる点にあります。選考が進んでいる応募者からの依頼であれば、担当者は企業に確認を入れます。決まる見込みのある人に対して手を抜く担当者はまずいません。

逆に、直接応募で進めている場合は、自分で聞くしかありません。聞くタイミングは内定が出た後です。この段階なら条件確認として自然ですし、内定を出した側も答えます。同じ理屈は配属現場についても言えるので、そちらは内定が出てから配属現場を聞くのは失礼か。返事より先に確かめる二つに書きました。

内定通知書で見る三行

最後に、紙で確かめる方法です。内定通知書(労働条件通知書)が出たら、次の三行を探してください。

  1. 基本給の額。賞与は基本給に月数を掛けて計算する会社が多いので、ここが小さいと賞与も小さくなります。提示年収が同じでも、基本給25万円の会社と35万円の会社では、賞与三か月分で30万円の差が出ます。
  2. 諸手当の内訳。現場手当、資格手当、みなし残業。これらは基本給に含まれないことが多く、賞与の計算対象から外れます。提示年収のうち手当の比率が高い会社は、賞与が薄くなる設計です。
  3. 賞与の記載そのもの。「賞与:あり」だけなのか、「基本給の◯か月分(前年度実績)」まで書いてあるのか。実績が書いてあるなら、それは会社が出せると判断した数字です。

基本給と諸手当の分かれ方については最初の給与明細で「求人票と違う」と感じる理由。固定と変動を分けて読むでも触れました。賞与に効くのは基本給のほうだ、という一点だけ覚えておけば十分です。

今日やること

手元にある求人票か内定通知書を一枚出して、基本給の額だけを書き出してください。提示年収ではなく、基本給です。

比較している会社が二社あるなら、二つ並べる。提示年収が同じでも基本給に差があるなら、賞与の出方が違う設計になっているということです。そこが分かれば、次に何を聞けばいいかが決まります。基本給が書かれていない求人票なら、それを確かめるのが最初の質問になります。

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