同じ職務経歴書が、ゼネコンの層を変えるだけで評価が反転する話

同じ職務経歴書が、ゼネコンの層を変えるだけで評価が反転する話 建設業界の地図

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同じ職務経歴書を、書き換えずに別の会社へ出しただけで、評価が反転することがあります。ゼネコンで施工管理をやってきた方の転職では、これが頻繁に起きます。書類で止まった理由が経歴の中身ではなく「出した層が合っていなかっただけ」だった、という場面を何度も見てきました。今回は、その層の違いを一点だけ掘ります。

「ゼネコン希望」という言葉は、選考では四つに割れている

面談で「ゼネコンを見ています」と言われたとき、こちらが頭の中でやっているのは、その一語をスーパー・準大手・中堅・地場に割り直す作業です。この四つは、同じ元請でも人を採る理由が違います。

仮の例で話します。建築の施工管理で経験七年、RC の共同住宅と小規模な庁舎を数件、いちばん大きい現場で請負三億、そこでは所長の下の次席。地方都市在住。この方の書類を準大手に出すと、返ってくるのは「ご経験は拝見しましたが、今回の募集規模とは開きがあります」という定型の見送りです。同じ書類を、同じ県内の地場ゼネコンに出すと、翌日に面接日程の候補が三つ届きます。

紙は一枚も直していません。変えたのは宛先だけです。

面談でこの説明をすると、多くの方が「自分の経歴は弱いのか、強いのか、どっちなんですか」と聞かれます。答えは、どちらでもありません。層によって問われている軸が別物なので、強い弱いという一本の物差しが、そもそも存在していません。

上の層が見ているのは、会社名ではなく請負金額と立場の組み合わせ

規模の大きい会社の書類選考では、工事部長や人事が真っ先に目を落とすのは、前職の社名ではなく現場の一覧です。そこで見ているのは、ほぼ二つです。ひとつの現場の請負金額、そこで自分が何だったか。

この二つは掛け算で読まれます。三億の現場の担当と、一億の現場の現場代理人では、後者のほうが評価が高くなることがあります。規模の大きい会社ほど「金額を背負った経験があるか」を問うので、若手でも一億規模の現場で代理人を務めた経歴が条件に入ってくる求人があります。大型現場に主任クラスで入っていた経験も、同じ理由で効きます。

会社の形態ごとに一つの現場にいる期間がどう違うかはゼネコン・サブコン・ハウスメーカー・プラント、一つの現場にいる期間で違いを見るに、元請と下請でお金と指示がどう流れるかは発注者・元請・下請。お金と指示の流れを求人票の一行から読む方法に書いています。

ここで、読者にとって不利な話をひとつ書きます。大型現場に長くいた方が、必ずしも上の層に通るわけではありません。五十億の現場に四年いて、ずっと躯体だけ、あるいは内装だけを担当してきた経歴は、金額の桁は大きくても「任されてきた範囲が狭い」と読まれることがあります。面接でも、質問は金額ではなく「所長が不在のとき、あなたはどこまで判断していましたか」に集まります。ここに答えられないと、桁の大きさは効きません。

ですから職務経歴書には、肩書だけでなく決裁の範囲を書いたほうがいい。「主任」「担当」「次席」は会社ごとに意味が違い、読む側はそれを知りません。協力会社との金額のやりとりに入っていたか、工程を自分で組んでいたか、発注者との打ち合わせに誰が出ていたか。この三つが書いてあるかどうかで、書類の通り方が変わります。

地場に出すと、同じ紙が「所長候補」に化ける

地場のゼネコンは、人を採る理由が上の層と違います。増員ではなく、数年後に所長を張れる人を確保するために採っています。だから一億規模の現場で次席だった若手は、上の層では届かなくても、地場では引く手数多になります。

面接で聞かれる中身も変わります。工法の話はそこそこに、「ご実家はこちらですか」「奥さまのお勤め先は」「お子さんの学校は」といった話が長くなることがあります。これは雑談ではなく、選考そのものです。地元で腰を据えてくれるかどうかが、その会社にとっては現場経験と同じ重みを持ちます。

そのうえで、入社後に食い違いが出やすい点を挙げます。地場は人が少ないので、現場だけをやっていればいい、という形になりにくい。面談後の後日談として届く話では、着任してすぐ積算の手伝いに入った、営業に同行して見積の説明をした、安全書類も自分で整えている、といったものが多い。上の層から移ると、これを「範囲外の仕事が降ってきた」と感じます。逆に、そこまで含めて任されることを面白いと言う人もいます。どちらが正しいという話ではなく、面接の場で工事部長に「所長は現場以外に何を持っていますか」と聞いておけば、入る前に分かる範囲です。

どの層から出すかは、あなたの経歴だけで決まっていない

ここからは、現役のエージェント会社が自社の記事には書きにくい部分です。

紹介の報酬は成功報酬で、決まったときの想定年収に連動します。つまり、同じ一件でも上の層のほうが金額が大きい。ところが上の層は決まる確率が低く、選考も長い。担当者は月ごとの数字を持っているので、この二つをどう天秤にかけるかは、その月の状況で変わります。月の後半に数字が足りていない担当者は、面接から内定までが速い中堅・地場を先に出します。期の頭で余裕があるときは、上から順に出します。応募者の経歴は同じなのに、当たる求人の層が担当者の都合で動く。これは実際に起きています。

もうひとつ、構造的な話があります。規模の大きい会社は自社で採用のルートを持っているので、エージェントに開ける枠が限られます。条件は細かく、書類の見送りも早い。担当者からすると「出しても返ってくる」相手です。一方、地場は紹介会社を使い慣れていない会社もあり、こちらは選考は速いが手数料の話で止まることがある。どの層を勧められるかには、こういう事情も混ざります。

後回しになりやすい型を一つだけ挙げておきます。これまでの経験と、行きたい先が離れすぎている場合です。地場で十年やってきた人が全国転勤の大手を第一希望にする、内装だけを見てきた人が所長職を希望する。こうなると担当者は企業に推す一言を作れません。手を抜いているのではなく、出せる求人が実際に少ないからです。

離れていると自分でも思うなら、面談で先に言っておくと動きが変わります。「いまの経験だと直接は難しいと思うので、間に一段挟む形があれば教えてください」。この一言があると、担当者は二段階の道筋で提案を組めます。層をまたぐ転職は、一回で跳ぶより二回に分けたほうが通ることが多い。

そして、請負一億の代理人と、五十億の一工種担当の違いが体感として分からない担当者が層を当てると、どうなるか。社名の知名度だけで上から並べて、全部見送りになって、三週間が過ぎます。応募者の経歴に問題がなくても、こうなります。

今日、現場を五項目で書き出してください

やることは一つだけです。これまで入った現場を、次の五項目で書き出す。

  • 用途と構造(共同住宅・庁舎・工場・商業、RC / S / SRC)
  • 請負金額(概算で構いません。分からなければ延床と階数)
  • 工期と、自分がその現場にいた期間
  • 自分の立場と、判断していた範囲(工程を組んだか、下請との金額に入ったか、発注者と直接やりとりしたか)
  • 発注者が官か民か、元請か下請か

五件も書けば、自分の経歴がどの層で高く評価されるかは、だいたい形になって見えてきます。そのうえで担当者に聞くとしたら、「私の経歴は、どの層でいちばん高く評価されますか。その理由は何ですか」の一問です。

返ってきた答えが会社名の羅列だけなら、層を当てる作業がされていないということです。請負金額と立場の話で返ってくるなら、その担当者は中身を読んでいます。判断はそこからで間に合います。

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