辞めて後悔するのはどんな人か。今の会社で持っているものを書き出す

辞めて後悔するのはどんな人か。今の会社で持っているものを書き出す 年収と待遇

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辞めた後に「戻れるなら戻りたい」と言う人は、条件が悪かった人ではありません。むしろ、社内で通る顔があって、待遇も悪くなかった人に多い。この記事は、いま辞めるかどうかを決めかねている施工管理・設備の技術者に向けて、判断の前に紙へ書き出しておくものを一つに絞って扱います。辞めろとも残れとも言いません。

後悔しているのは、待遇が悪かった人ではありません

面談を受け持っていた時期、退職後しばらくしてから連絡をくれる人が一定数いました。その内容はだいたい二種類で、片方は「移って正解でした」、もう片方は「前の会社の方が良かったかもしれない」です。後者に多かったのは、前職で所長の手前まで来ていた人、特定の施主との窓口を任されていた人、現場が近くて通勤が読めていた人でした。

たとえば関東の中堅ゼネコンにいた三十代後半の方は、面談では残業と休日の話しかしませんでした。移った先で年収の額面は少し上がったのですが、半年後の連絡では「前の会社では現場の段取りを自分で決められた」「新しい会社では前任のやり方に合わせるところから」という話になっていました。待遇の問題ではなく、持っていた裁量と社内での立ち位置が、移ると一度ゼロに戻ることに後から気づくわけです。

良かった部分は、本人にとって当たり前の空気になっています。空気は書き出せません。一方で不満は、辞めたいと思った瞬間から何度も頭の中で言語化されています。この非対称が、判断を狂わせます。

面談では、不満だけが言葉になって出てきます

初回面談の最初の十分で出てくるのは、ほぼ例外なく不満です。休みが取れない、残業代が全部は出ていない、上が詰まっていて昇進が見えない。三つくらい並びます。逆に「いま会社から受け取っているもの」を聞くと、多くの方は年収の額面しか答えられません。

ここで、エージェント側に不都合な話を一つ書いておきます。面談で持ち物の棚卸しを丁寧にやると、結論が「いまは動かない」に落ち着くことがそれなりにあります。人材紹介は成功報酬なので、その面談は担当者の数字にはなりません。担当者が不誠実だからではなく、限られた時間をどこに使うかという話です。結果として、面談は不満の裏返しで求人を探す流れになりやすい。休みが欲しいと言えば休みの話が中心の求人が並び、年収が不満だと言えば帯の上限が高い求人が並びます。並んだ求人の側から自分の判断を作り直すと、持ち物を数えないまま話が進みます。

ですから、棚卸しは面談の前に自分でやっておくほうがいい。担当者に委ねる部分ではありません。

書き出すのは年収ではなく、失うと戻せないものから

紙を一枚用意して、三列に分けます。

  1. 金額で戻せるもの 基本給、直近三年の賞与の実績額、役職手当、現場手当、通勤の実費
  2. 金額では戻せないもの いまの役職、次の工事のアサイン、所長や部長の推薦、社内で話が通る相手の数、有休を申請したときに通る感覚、現場までの距離
  3. 時計が動いているもの 退職金の勤続年数、建退共の扱い、住宅ローンを組む予定があるかどうか

三列目が抜けやすいところです。退職金は三年勤めればある会社が多いのですが、勤続年数は移れば当然ゼロからになります。五十代後半で入り直すと、定年までの年数が足りず、同じ制度があっても受け取れる形にならないことがあります。制度の有無ではなく、自分が何歳で入るかで結論が変わります。

もう一つ、一列目で見落とされるのが内訳です。いまの年収が役職手当込みで残業代の付かない形なのか、一般職で残業代が実額で出ている形なのかで、同じ金額でも意味が違います。役職に就いた時点で残業代の扱いが変わる会社は多く、移った先で役職が付かなければ、額面は近くても手元に入る形が変わります。ここは求人票の年収欄だけを見ていると落ちる観点です(求人票の年収の読み方 幅・みなし残業・賞与のどこまでが確定分か、最初の給与明細で「求人票と違う」と感じる理由。固定と変動を分けて読む)。

決算賞与がある会社なら、三年分を並べてください。決算賞与は会社の利益から配るので、どの現場に付いていたかで額が動きます。良かった年の額を自分の平常値として記憶していると、比較の土台が高く積み上がったままになります。

「辞めたい」が止まるのは、気持ちが晴れたときではありません

辞めたいと言っていた人が最終的に残るとき、理由はだいたい二つです。次の工事にアサインされたとき、そして良いポジションを打診されたとき。上司と話して気持ちが晴れたから、という形はほとんど見ません。具体的な仕事と役割が来ると、判断が変わります。

内定を伝えた翌週に所長から次の現場の話が来て、辞退になる。これは実際に起きます。それ自体は悪いことではありません。ただ、引き留めの条件は確かめ方があります。

  • いつからか(辞令の日付が出るか、口頭だけか)
  • どの現場で、どの立場か(代理人か、次席か)
  • 誰の下につくか
  • 処遇はどう変わるか。固定が上がるのか、手当が付くのか、役職手当と引き換えに残業代が消えるのか

口頭で「次は任せる」とだけ言われた話は、辞令が出るまで実体がありません。半年後に組織が変わって流れた例も見ています。書面か、せめて日付まで聞いてください。

ついでに書いておくと、内定辞退は担当者の数字に直接効きます。だから引き留めに応じると、強く止めようとされることがあります。これも人柄の問題ではなく、成功報酬という報酬の仕組みがそうさせています。止められたときに、その言葉が自分の判断材料かどうかは切り分けたほうがいい。

虚像を追うと、二社目でもう一度同じところに戻ります

後悔のもう一つの形が、「思っていた会社と違った」です。入社して三か月くらいで出てきます。

これが起きる仕組みは単純で、行き先の像が前職の不満の裏返しだけでできているからです。休みが欲しい、上が詰まっていない会社がいい、対価を正当に払う会社がいい。どれも本当の気持ちですが、これは条件であって、自分の経験が生きる場所の話ではありません。

そして、希望がその形のままだと、こちら側から出せる求人が実際に減ります。企業に推薦するときは「この人はこの現場で何ができるか」を一行で書きます。これまで扱ってきた建物の規模や構造と、行きたい先が離れていると、その一行が作れません。作れない案件は、提案として出しづらくなる。応募者が後回しに見えるとしたら、理由は経験と希望の乖離です。

短期離職が重なると、この一行はさらに書きにくくなります。一社目で持っていたものを数えないまま出て、二社目で同じ違和感に当たり、また動く。この循環に入った方を何人か見ています。止める場所は、二社目ではなく一社目を出る前です。一社目を出ると決めたあと、行き先を並べる前に決めておくことは 現場監督を辞めたいとき、先に決めるのは行き先ではなく年収を落とせるかです に書きました。

今夜やること

直近十二か月の給与明細と、直近三年の賞与明細を並べて、固定分・変動分・役職手当に分けて一枚に書き出してください。それだけです。

そのうえで、余白に「金額では戻せないもの」を三行だけ足す。次の現場の話がどこまで来ているか、いま自分の話が通る相手が社内に何人いるか、通勤にかかる時間。

この一枚が手元にないまま求人票を見ると、帯の上限と、いま持っているものの一部だけを比べることになります。書き出した結果、動くという結論になるなら、それは前より確かな判断です。残るという結論でも同じです。

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