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内定通知に、配属先の現場名は書かれていません。書かれているのは「就業場所:本社および当社の定める現場」といった一行です。施工管理で転職する人にとって、日々の生活を決めるのは会社名ではなく、どの現場に、いつから、どのくらいの期間入るかのほうです。ここでは、内定が出てから承諾の返事をするまでの数日間に、何を誰に聞けるのかを扱います。
内定通知に配属現場が書かれないのは、隠しているからではない
配属は人事が決めていません。決めるのは支店なり本社なりの工事部で、しかも月ごとの人繰りの中で動きます。今いる現場の竣工が二か月ずれれば、そこに張り付いている人が空かず、あなたが入るはずだった現場の担当が変わります。採用の稟議が通った時点では、工事部の側も「増員が一人取れた」以上のことは確定していないことが多い。
面談で聞いた話です。内定承諾の翌週に電話がかかってきて、「まず支店の◯◯工事に入ってもらいます」と告げられた。面接のときは別の用途の物件の話をされていたので、聞き返したら「そちらは工程が後ろに倒れまして」と。悪意はなく、単に採用の進行と工事の進行が別の時計で動いているだけです。
だから「決まっていない」という返答自体は、隠し事の兆候ではありません。読むべきなのは、決まっていないことをどう説明するかのほうです。「今は何とも言えませんが、入社月に空く現場は支店内で二つか三つで、いずれも◯◯系です」と言える会社と、「配属のことは入ってから」で止める会社では、工事部が人繰りをどこまで把握しているかが違います。
返事を急がせる力は、会社側とエージェント側の両方から働く
ここは先に書いておきます。人材紹介の報酬は成功報酬で、発生するのは入社した時点です。金額は入社時の理論年収に一定の割合を掛けた形が一般的で、売上として立つのは入社月に紐づきます。つまり、入社日が月をまたいで後ろにずれると、担当者の今月の数字からは消えます。加えて、入社後の一定期間内に辞めた場合に手数料の一部を返す規定を置いているのも普通です。担当者が入社日にこだわるのも、入社後しばらく様子を聞いてくるのも、この二つの仕組みから素直に出てきます。
これは担当者が不誠実だという話ではありません。企業の側にも同じ方向の力があります。着工に合わせて人を入れたい、期の切り替わりで受け入れたい、他社に取られたくない。内定が出たあと、エージェントの社内では辞退を防ぐための面談が設定されることがあり、担当者は必ず他社の選考状況を聞いてきます。その情報は、形を変えて企業側にも伝わります。
覚えておいてほしいのは、入社日を二週間後ろにずらすだけで、配属の候補になる現場が入れ替わることがあるという点です。急がされる理由が会社の工事の都合なのか、報酬の計上月の都合なのかは、外からは区別がつきません。区別がつかない以上、「返事は◯日までに」と言われたときに、その期日が誰の都合なのかを一度聞いてみてよい。「入社日が四月一日でなく四月十六日になると、配属の候補は変わりますか」と工事部に聞けば、工事の都合かどうかはすぐ分かります。
承諾の前に、人事ではなく工事部と話す場を作る
内定後に条件を確認する場を、オファー面談と呼んで正式に設定する会社もありますし、こちらから頼まないと出てこない会社もあります。エージェント経由なら、担当者に一文送るだけで済みます。「承諾の判断のために、二次面接でお会いした工事部の方に配属の見通しを伺いたいので、短い時間をいただけないか打診してください」。
人事に聞いても意味がありません。人事は配属を決める会議に出ていないからです。聞く相手は、面接に出てきた工事部長か支店長です。そこで出す質問は、抽象的な希望ではなく、相手が事実として答えられる形にします。
- 「入社月の時点で、私が入る候補になっている現場はいくつありますか。着工済みですか、これからの現場ですか」
- 「配属を決めるのは支店の工事部ですか、本社ですか。決まるのは入社の何週間前くらいでしょうか」
- 「最初の一年で、現場が変わる可能性はどのくらいと見ておけばいいですか」
- 「通勤は自宅からを想定しています。支店で今動いている現場のうち、自宅から一時間半を超えるものはどのくらいの割合ですか」
最後の質問は、配慮を求める言い方ではなく、人繰りの事実を聞く言い方になっています。工事部長にとっては、答えやすいのはこの形です。返ってきた答えが「うちは現場が広域なので、住み込みも普通です」であれば、それは条件の不一致であって、あなたの希望が過大だという話ではありません。
女性の技術者が入っている現場が、実際にどこかを聞く
制度の有無を聞いても、返ってくるのは規程の話です。聞くなら、現に人がいるかどうかで聞きます。
- 「直近一年で、御社の現場に女性の施工管理が入っていた現場はどれですか。用途と規模を教えてください」
- 「その現場では、仮設のトイレと更衣室はどう手当てしていましたか」
二つめに意味があります。仮設の計画を決めるのは元請です。ゼネコンの現場なら元請の仮設計画で決まり、設備サブコンや専門工事会社で入るなら、自社では決められません。つまり「うちは配慮しています」と言われても、下請として入る会社の場合、実際にどうなるかは入る現場の元請次第です。ここまで踏み込んで答えられる工事部長は、実際に手配した経験がある人です。「元請に言って別に借りてもらった現場もあれば、近くの施設を使ってもらった現場もあります」といった具体が出るかどうかで、その会社での前例の厚みが分かります。前例がなければ「これまでいませんでした」と返ってきます。それも情報です。
そして、承諾の前に現場を一つ見せてもらえないか頼んでみてください。「配属候補の現場を一つ、外から見るだけでも構わないので見学させていただけませんか」。断られる理由はいくつかあり、施主との関係で入構が難しい現場もありますから、断られたこと自体を減点にはできません。読むのは断り方です。代わりに竣工済みの物件を挙げてくる会社、別の現場を提案してくる会社は、社内で調整を試みています。
口頭で決まった配属は、書面のどこにも残らない
労働条件通知書の就業場所欄に現場名が入ることは、まずありません。会社の定める場所、と書かれます。ですから、オファー面談で聞いた「最初は自宅から通える現場で」という話は、どこにも残らないまま入社日を迎えます。そして配属を決める工事部長は異動するかもしれず、あなたの担当エージェントも途中で替わる可能性があります。この業界の担当者は、日中を企業対応、夕方以降を候補者対応に使う働き方の構造上、入れ替わりが早い。半年後に「あのとき聞いた話」を覚えている人が誰もいない、ということが起こります。
担当者の一日がなぜそう割れているかはエージェントから22時にメールが来る理由と、こちらの連絡の出し方に、担当が替わるときに何が引き継がれないかは「担当が変わります」と連絡が来たとき、実害は選考の段階で決まりますに書いています。
対策は単純です。オファー面談のあと、その日のうちにメールを一通出します。エージェント経由でも構いません。
本日伺った内容を確認させてください。入社時点の配属候補は支店内の二現場で、いずれも着工済み。配属の確定は入社の二週間前ごろ、決めるのは支店の工事部。最初の一年で現場が変わる可能性はある、と理解しました。相違があればご指摘ください。
約束を取り付ける文書ではありません。関係者の記憶を一致させて、それを文字で残すだけです。後で食い違ったときに、「言った言わない」ではなく「あのメールの前提が変わったので説明してほしい」と言える形になります。エージェントの担当者にとっても、引き継ぎの材料になるので嫌がられません。
今日やること
内定が出ているなら、承諾の返事をする前に、担当者へ一行だけ送ってください。「承諾の判断のために、二次面接で同席された工事部の方と十五分お話しさせていただけませんか」。まだ選考の途中なら、この一文を出すタイミングが来ることを頭に置いて、聞きたいことを三つだけ書き出しておく。配属候補の数、決まる時期、決める部署。この三つが埋まるかどうかで、入社後の一年の見え方がかなり変わります。


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