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面談で辞めたい理由を聞いていくと、いちばん多いのは「働いた分の対価が出ていない」です。休みが取れないも出ますが、順番としては対価が先に来ます。ただ、同じ不満でも、建築にいる人と土木にいる人とでは、転職で解決するかどうかの答えが変わります。この記事は給与と労働時間の切り分けだけを扱います。
「給料が安い」と言った面談で、実際に並ぶ求人
先に、エージェント側の仕組みの話をします。人材紹介の手数料は、決まった人の提示年収に対する割合で計算されます。つまり提示年収が上がる方向は、担当者と応募者の利害が一致します。ここは遠慮なく使っていい部分です。
一方で、残業時間は手数料に一切効きません。求人票の残業時間の欄は会社の自己申告ですし、入社後に実際の出面が違っていても、手数料が戻るわけではない。結果として、面談で「給与が安い」と言うと、年収の数字が上がる求人が並びます。時間あたりで見て上がるかどうかは、そもそも議題になりません。担当者が不誠実だからではなく、評価される軸がそこにないからです。
実際にあった形でいうと、土木の三十代の方が「対価に納得がいかない」と言った面談で、年収帯の上の求人が三本出ました。三本とも、年度末に工程が寄る種類の工事を主に受けている会社です。年収は上がります。ただ、三月の出面は一時間も変わりません。この観点は、自分で持ち込まないと提案には乗りません。
建築は、会社を変えると給与の原資そのものが変わる
建築は工事ごとの利益率の幅が大きい分野です。同じ規模の会社でも、元請で入っているか下請で入っているか、扱う建物の種類、施主の層で、手元に残る利益が違います。給与の原資が会社ごとに違うので、同じ職務経歴書を層の違う会社に出すと、提示額が並びません。数万円の差ではなく、帯そのものがずれます。
だから建築で対価に不満がある場合、会社を変えることに意味があります。自分の働き方を変えなくても、原資の厚い側へ移れば額が動く余地がある。
確かめ方は、面接で粗利率を聞いても答えは返ってこないので、賞与の出方から逆算します。二次面接で工事部長クラスが出てきたら、こう聞きます。
- 決算賞与はありますか。あるとしたら、全社一律ですか、現場によって差が付きますか
- 直近で差が付いたとき、どのくらいの幅になりましたか
「現場で差が付く」と答える会社は、工事の利益が配分に直結している会社です。原資が工事にある、ということが分かる。ただし裏返せば、どの現場に付いていたかで額が変わるということでもあります。本人の働きだけでは決まらないので、毎年同じ額が出る前提で計算しないでください。年俸制で賞与そのものがない会社もあります。提示額の内訳をどう読むかは 求人票の年収の読み方 幅・みなし残業・賞与のどこまでが確定分か のほうに書きました。
土木は、給与は動く。ただし時間は工事の種類で決まる
土木で給与が出ていない場合、会社側の事情によることがあります。一族経営で利益が中に回っている、といった形です。そこを外れれば給与は改善します。つまり、給与「だけ」なら会社を変えて動きます。
問題は労働時間のほうです。土木の発注者は国土交通省、都道府県、市区町村、高速道路会社、鉄道会社といった公共側が中心で、工期と繁忙は工事の種類と年度に紐づいています。会社を変えても、同じ種類の工事を受けている限り、山の位置は同じところに来ます。
ここが建築と逆になる部分です。土木で時間を変えたいなら、受けている工事の種類を変えるしかない。そしてそれは、会社を変えることと同義ではありません。同じ会社の中で担当する工事が変わって解決することもあるし、会社を変えても種類が同じなら何も変わらない。「転職すれば休めるようになる」という筋で考えると、ここで外します。発注者の違いそのものは 建築と土木は、転職市場では別の業界です。分かれ目は発注者の一行 に書きました。
もう一つ、土木の給与で押さえておく点があります。一級土木施工管理技士は、本人の実力の証明である以上に、会社が仕事を取るための要件です。公共工事の入札に資格者が要りますし、経営事項審査の点数も資格者の数で動く。だから資格手当や処遇の差は、会社の受注枠に対する対価として付いています。百万円ほど変わる例もあります。建築の資格とは効き方が違うので、「土木で対価に不満」の解決策として、転職より先に資格が来ることがあります。
面接で聞く相手を間違えない
土木側で確かめるなら、聞く相手は人事ではなく現場を持っている人です。人事は制度の有無しか答えられません。二次面接で工事部長や支店長が出てきたときに、この二つを聞きます。
- いま受けている工事は、発注者の構成でいうとどのあたりが多いですか
- 年度末の三か月と、それ以外の月とで、現場の出面はどのくらい違いますか
返答の読み方です。「まあ年度末は忙しいですね」で終わるなら、その人は数字で把握していません。逆に、工期の取り方や、年度をまたぐ工事をどれくらい持っているかという話で返ってくるなら、時間の山を会社として見ている。後者なら、入社後の話も具体的にできます。
転職で解決しない側の話も書いておきます
面談で「辞めたい」と言っていた人が留まるのは、次の工事にアサインされたときと、上のポジションを打診されたときです。気持ちが晴れたからではなく、具体的な仕事と役割が来たから変わる。つまり、いま不満の総量が最大に見えているのは、たまたま端境期にいるからかもしれません。
逆に、移ったあとで後悔するのは、元の会社で良いポジションや良い待遇を得ていた人に多いです。その旨みを失ったことに後から気づいて、思い描いていた会社像との差を埋めようと短期で動き直す形になります。
なお、長時間労働で体を壊しかけている場合や、ハラスメントを受けている場合は、ここまでの損得の話とは別に考えてください。原因が特定の会社や上司にあるなら、移ることで解決します。働き方そのものに原因があるなら、会社を変えても同じことが起きます。どちらなのかを先に見分けてください。
まず、直近十二か月を一枚に書き出す
今夜できることを一つだけ。給与明細十二か月分と、勤怠の記録を出してきて、月ごとに二列で書き出します。支給総額と、残業時間。それだけです。そこから年間の総支給と総残業時間を出して、割ります。
読み方はこうなります。
- 金額は低いが、残業が一年を通して平らに散っている。原資の問題です。建築なら、会社を変えて動く余地があります
- 金額は並だが、特定の三か月に山が立っている。工事の種類の問題です。会社を変えても、同じ種類を受けている会社なら残ります
- 両方だった場合は、どちらを先に解決するか順番を決めてから動く
この紙をエージェントにそのまま見せる必要はありません。ただ、「年収は今これくらいです。ただし三月の残業がこれだけあるので、そこが変わらないなら年収が上がっても受けません」という形で伝えてください。数字で条件を渡されると、提案は変わります。「忙しいのが嫌で」という言い方は、手数料に効かない情報なので、提案に反映されません。固定と変動の分け方に自信がなければ 最初の給与明細で「求人票と違う」と感じる理由。固定と変動を分けて読む のほうも併せて見てください。


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