土木の専門サブコンは何をする会社か。求人票ではなく施工実績から読む

土木の専門サブコンは何をする会社か。求人票ではなく施工実績から読む 建設業界の地図

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「土木施工管理/未経験歓迎」と書かれた求人票を並べて、どれも同じに見えてしまう。これは業界の外から土木を見ている人がほぼ必ず通る場所です。この記事では、ゼネコンの下で働く土木系の専門工事会社(専門サブコン)を取り上げて、その会社が何をしている会社なのかを求人票の外側から読む方法に絞って書きます。設備サブコンの話や上水道管の話には触れるだけにします。

「土木のサブコン」は、扱う構造物ごとに別の会社になっている

サブコンというのは、元請であるゼネコンから工事の一部を請け負う専門工事会社のことです。建築のほうでは空調や電気といった設備の会社を指すことが多いのですが、土木にも同じ構造があります。

建築側がどう分かれているかはサブコンの求人票は社名では中身が分かりません。強電・弱電・空調・衛生・上水道の見分け方に書いています。ただし土木の場合、分かれ方が構造物の種類そのものです。

  • 基礎:建物や橋を支えるために地中に杭を打ち込んだり、地盤を固めたりする工事。地面より下だけを担当します
  • 土留め:掘った穴の壁が崩れないように支える仮設の工事。完成すると撤去されるものを作る、という特殊な立ち位置です
  • 治山・法面:山の斜面が崩れないように押さえる工事。現場が山の中になります
  • 橋梁の上部工:橋の、車が通る部分を作る工事。橋脚を作る会社と、その上に桁を架ける会社は別であることが多い
  • 下水道の管路更生:地中にすでに埋まっている老朽化した下水管を、掘り返さずに内側から補強して作り直す工事。新しく作るのではなく、直す工事です
  • 海洋・港湾:岸壁や防波堤など、水際と水中の工事
  • 舗装:道路の表面を作る工事。夜間に規制をかけて進めることが多く、時間の使い方が他と違います
  • 塗装:橋や鋼構造物の塗り替え。錆を落として塗り直す工事で、構造物を長く保たせるための仕事です

これを見て気づいてほしいのは、どれも「土木」ですが、隣同士でも仕事の中身が重なっていないということです。基礎の会社で5年やった人と、橋梁上部工の会社で5年やった人は、同じ「土木施工管理5年」でも、使ってきた道具も打ち合わせる相手も違います。

橋梁では、新設の上部工と補修・塗装がさらに別の会社に分かれます。何が別物になるかは橋梁の補修・塗装に移って後悔しないか。新設と何が別物かを先に確かめるに書いています。

分類から外れるところに、上水道という選択肢があります

上水道の管を敷く工事は、土木から派生した領域でありながら、建設業の許可の分類では管工事に入ります。土木から見ても設備から見ても端に位置していて、どちらの一覧にも収まりきりません。だから見落とされます。

この分野には全国区の大手がいません。理由は仕事の出方にあります。発注が自治体の単位で細切れになるうえ、地域に密着していないと参入しづらい。大手の側にも、積極的に取りに行く動機が薄い。結果として、地方で自治体の工事を継続的に請けている会社が主役になります。

待遇の話をします。地場の会社でも、一千万円台に届く人がいます。ただし誰でもではありません。現場代理人として、敷設替えを回せる人です。すでに水が通っている管を新しいものに替える工事で、ここが技術の山になります。管の継ぎ目を正確に繋げないと漏水します。埋め戻したあとに水が漏れれば、掘り直しです。金額が出るのは、その責任を負える人だから、という順序で理解したほうがいい。

未経験で入れないわけではありません。ただし働き方はやや忙しい部類に入ります。金額だけを見て選ぶ分野ではない、というのが正直なところです。

会社のサイトの「施工実績」を、工事名で10件書き出す

では、応募しようとしている会社がこのどれなのかをどうやって知るか。求人票の職種欄は「土木施工管理」としか書いていないことが多く、会社名にも手がかりがないことが珍しくありません。「○○建設工業」という社名から、治山専門なのか管路更生専門なのかは読めません。

手っ取り早いのは、その会社のウェブサイトの施工実績のページです。ここは営業のために作られているので、会社が自分で「うちはこれが得意です」と言っている場所になります。見る手順はこうです。

  1. 直近1〜2年の工事を、上から10件、工事名だけ書き出す
  2. 工事名の中の構造物の言葉を拾う(橋、護岸、杭、法面、管渠、擁壁、など)
  3. 発注者が誰かを見る。国や県か、市か、民間か、ゼネコンか
  4. 場所を見る。1つの都道府県に固まっているか、全国に散っているか

10件並べると、その会社の輪郭が出ます。同じ言葉が7件8件と繰り返されていれば、それがその会社の本業です。逆に、10件がばらばらで、規模も小さいものが並ぶなら、地域の何でも屋に近い会社である可能性が高い。どちらが良いという話ではなく、入ったあとに身につくものが違うという話です。

4番の「場所」は見落とされがちですが、入社後の生活に直結します。全国に現場が散っている会社は、その現場の近くに寝泊まりする前提で人を動かします。面談で「海洋港湾の会社に入ったら、月のうち家にいる日が数えるほどだった」という後日談を聞いたことがありますし、逆に治山の会社で「山の現場に入ると携帯が通じないので、会社からの連絡は下りてからまとめて返していた」という話もありました。求人票の勤務地欄にある本社の住所は、実際にいる場所とは違います。

同じ「土木10年」が、応募先によって評価が反転する

ここからが、選考の側から見た話です。

専門工事会社の面接では、経験年数より「その構造物をやったことがあるか」が先に見られます。橋梁上部工を10年やってきた人が管路更生の会社を受けると、書類段階では歓迎されるのに、面接で話が進むにつれて提示条件が下がっていく、ということが起きます。企業側の頭の中では、工程を組む力や書類をまとめる力は評価する、でも扱うものが違うので現場を任せるまでには時間がかかる、という引き算が行われている。この引き算の分が、金額に出ます。

一方で、同じ人が地場のゼネコンを受けると評価が跳ね上がることがあります。地域の元請は、特定の構造物の専門家ではなく、現場を一つ回せる人を欲しがっているからです。足りないと言われた経歴が、応募先の層を変えるだけで十分と言われる。これは土木に限りませんが、専門工事会社が細かく分かれている土木では特に振れ幅が大きくなります。

そして未経験の方に関わる話として、年齢で企業の見方が変わります。20代なら育成前提で採れますが、30代以降は即戦力の枠で見られるため、未経験からこうした専門分野に正社員で入る難易度は上がります。企業は人手が足りなくても慈善で採っているわけではなく、紹介手数料と、独り立ちまでの給与と、教える側の時間を合計して回収年数を逆算しています。人手不足であることと、未経験に高い額を出せないことは、企業の中では矛盾していません。

エージェントに聞いても、その会社の中身が返ってこないことがある

これは自分が中にいたから書けることですが、担当者が土木の専門工事を説明できないケースは普通にあります。理由は二つです。

一つは、求人票に書かれた工事の名前が何を指すのかを、担当者が求人票以上には知らないこと。もう一つは、求人企業側の窓口が総務や管理部門で、現場のことを詳しく話せないこと。専門工事会社は規模が小さいことも多く、採用の窓口に現場の人が出てこないのです。結果として、求人票の文言が往復するだけになります。

もう一つ、読者にとって不利な話をします。土木の専門工事会社の求人は、欠員が出たときの1名枠であることが多い。エージェントの報酬は成功報酬なので、担当者から見ると、複数名を継続的に採っている会社の求人のほうが動かしやすい案件になります。これは担当者の怠慢ではなく、月ごとの数字を背負った仕組みの側の話です。だから、あなたが「基礎工事の会社を見たい」と具体的に言わない限り、そういう求人は候補の山の上には出てきません。

担当者が企業に推す一言を作れないと、出せる求人は実際に少なくなります。逆に言えば、構造物の名前まで絞って希望を出せる人は、担当者が探す先を限定できる分だけ話が早くなります。「土木がやりたい」ではなく「法面の会社を見たい」と言えるかどうかで、出てくる求人が変わります。

同じことは解体でも起きます。三つの分類と、年収の出どころは解体は未経験から800万円が視野に入る。ただしその原資は工事の利益だけではありませんに書いています。

「公共工事だから安定している」は、半分だけ当たっています

業界の外からよく持たれる思い込みが、土木は公共工事が中心だから景気に左右されず安定している、というものです。会社の受注という意味では、確かに民間工事中心の分野より波は読みやすい。ただ、働く側の体感に落ちてくると別の顔が出ます。

発注が年度単位で動くため、工期の締めが特定の時期に寄りやすい。面談では「秋までは余裕があったのに、年明けから現場が重なって連日遅くなった」という話し方をする方がよくいました。さらに、災害が起きればその復旧に人が回るので、予定していた配属が変わることもあります。安定しているのは会社の売上のほうで、個人の月ごとの忙しさが平らになるわけではない、という分け方をしておくと実態に近いです。

もう一つ。専門分野で腕を上げると、その業界の中では強くなりますが、外には出にくくなります。海洋港湾や管路更生の経験は、同じ分野の他社では高く評価される一方、建築の現場に移ろうとすると評価されにくい。専門に寄せることは、行き先を深くすると同時に狭くする選択でもあります。ここを聞かされないまま入ると、数年後に転職を考えたときに驚くことになります。

今日やること

気になっている会社を1社決めて、そのサイトの施工実績から直近の工事を10件書き出してください。工事名、発注者、場所の3つだけで構いません。それを並べて、繰り返し出てくる構造物の名前を丸で囲む。それがその会社の本業です。

その1語を持って面談に行けば、担当者との会話の解像度が変わります。判断はそのあとで構いません。

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